Derm.'98
たかがイボ,されどイボ
本多 章乃
1
1日本大学板橋病院皮膚科
pp.133
発行日 1998年4月15日
Published Date 1998/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412902527
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ヒト乳頭腫ウイルス(human papilloma virus;HPV)は,少し前まではいぼウイルス程度にしか認識されていませんでしたが,その後婦人科領域で子宮頸癌からそのDNAが検出されるようになって,俄然注目を浴びるようになり,皮膚科領域でもbowenoid papulosisから16型が検出されたのにつづき,Bowen病からも16型,34型,58型などが同定されています.研究も進んで現在80型まで登録され,その型によって特異的細胞変性効果があることは周知の通りです.と,ここまでは学術的な話ですが,実際にいわゆるいぼ・尋常性疣贅の患者さんを治療して感じることは,随分と治療に対する反応に差があるということです.毎週きちんと通院してもらって液体窒素療法を施行し,角化が強ければスピール膏を貼布して削り,時にはグルタールアルデヒド溶液を塗布しても,なかなか目に見えては良くならないことがあります.誰がどうみても2型関連(2,7,57型)のHPV感染によるごく普通のcommon wartであってもです.そんな時,私は患者さんに「このいぼは根性がありますね.」などと言うのですが,半分冗談で半分は本気です.同じ日本人にもいろいろな人がいるように,やはりウイルスもDNAをもつひとつの生き物ですから,同じ型といっても性格?の差があるのではないかと思うのです.現在のところ,いぼに対する決定的な治療法はありませんが,いずれ1滴つければいぼウイルスが全滅するような特効薬ができることでしょう.少し寂しいような気もしますが.
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