交見室
男性不妊症治療に関する雑感/膀胱部分切除術
山口 孝則
1
1宮崎医科大学
pp.174-175
発行日 1995年2月20日
Published Date 1995/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413901396
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先日36歳の男性が5年来の不妊を主訴に当科外来を初診した。某産婦人科からの紹介で,無精子症を指摘され精査依頼の紹介状を持参していた。診察すると体格は小太りで,陰茎,陰毛は正常であるが,精巣容積は3.5mlと極度に萎縮していた。内分泌学的検査を行うと,FSH 58.1mlU/ml,LH 16.3mlU/ml,テストステロン498.6ng/mlと,ゴナドトロピンレベルは+2SD以上の高値を示し,染色体検査は47 XXYの報告であった。患者は最近のマスコミの報道を数々耳に入れており,難治性の不妊夫婦でも体外授精を行えば妊娠が可能で,ぜひそれをやってくれと期待して受診してきたのである。患者に対しては2回目の受診の際,治療に反応する見込みのないことを知らせ,どうしても子供が欲しければAIDか養子をとることしかないことを説明したが,医師にとってこうした説明をするのは非常に辛いところである。
男性不妊症の治療においては,まず患者が薬物治療,外科的治療などの治療法のいずれかに果して反応するかどうかを事前に見きわめることはきわめて大切である。本症例のように原発性造精障害で,精巣容積が10inL以下でFSHが+2SDを超える症例は,たとえクラインフェノレター症候群でなくても治療に反応する見込みはないし,もはや精巣生検の適応もない。こうした不妊患者に対しては,できる限り早く予後に関して知らせるべきで,いたずらに治療に対する期待をいだかせてはならないと思われる。
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