交見室
非吸収性糸による尿路の縫合/女性尿失禁手術における簡易尿道吊り上げ法を読んで
藤田 公生
1
1浜松医科大学
pp.355
発行日 1994年4月20日
Published Date 1994/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413901209
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本誌1月号に,非吸収性の縫合糸を用いたために発生した尿管結石の症例が掲載されている(福井他:48:60-62,1994)。論文中にも記載されているように,泌尿器科のトレーニングを受けた医師なら尿管の縫合に非吸収性の糸を用いるはずはない。米国ならこのような糸を使用しただけで訴えられても仕方のない事件であろう。事件を防ぐには一般外科医にこの問題をアピールする必要があると考えて,広く外科医の読む雑誌に自験2例を,糸を核として成長した結石の写真とともに報告したことがある(手術32:809-811,1978)。いまだにこのような症例が発生することは残念であり,この短い論文には実に根深い,解決のむずかしい問題がふくまれているといえる。
泌尿器科医の数もその後増えたと思うが,地方にいくとまだ泌尿器科医の手の回らない地域がある。他方,泌尿器科は病院の中では大手を振って歩いていられるが,開業したらみじめなもので,なかなか患者が集まってこないというのが当地で開業した先生方の嘆きである。患者数を考えると,泌尿器科医はどうしても医療の最前線まで出ていくわけにはいかず,手術できるような施設として考えるとなおさらのことである。
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