増刊号特集 小児泌尿器科診療
治療の実際
逆流性腎症
近田 龍一郎
1
,
坂井 清英
1
,
折笠 精一
1
1東北大学医学部泌尿器科
pp.190-196
発行日 1994年3月30日
Published Date 1994/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413901180
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逆流性腎症という言葉を最初に用いたのはBailey(1973年)1)である。しかし,彼は必ずしも膀胱尿管逆流症(VUR)に伴う腎障害に対して幅広くこの様な呼び方をしたのではなく,IVP上腎杯の棍棒状変形や腎実質の菲薄化といったいわゆる腎瘢痕を伴うVUR症例に対し命名したものであった。このため,その後腎瘢痕と同義語のように用いられることが多かった。1980年前後2〜4)には,VUR・腎瘢痕・腎機能障害を伴った例では高率に糸球体硬化を伴うことが注目され,逆流性腎症=糸球体硬化といった考えが出てきた。このような例のほとんどが高度の蛋白尿を伴っていたため,逆流性腎症を把握するのに尿蛋白がよい指標となるとされた。しかし,こうした報告の多くは,血清クレアチニン(Cr)がすでに上昇した高度腎機能障害例を対象としていた。しかし,最近の流れとしては,VURに伴う腎障害を幅広く逆流性腎症と呼び,しかも早期に腎障害を捉える方向にある。
さて,腎不全患者の5〜30%にVURが認められており,特に若年の腎不全患者ではその占める割合が高くなるとされている5)。このように逆流性腎症は,非常に重要な疾患であるにもかかわらず,その発生機序や進展機序についてはまだ不明の点が多い。
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