Coffee Break
術前の説明について
島 博基
pp.64
発行日 1994年3月30日
Published Date 1994/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413901155
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現在では外科的手術を含めた治療にあたってはinformed consentに表わされるように合併症についても多岐に渡る説明が要求されている。しかし,米国と日本では宗教的・社会的背景も異なっているので,米国方式をそのまま日本に適用するのは決して適切でないことがある。事実を客観的に述べることは重要であるが,その事実が患者あるいは患者の家族にとってどの程度の心理的負荷を与えるかを知らねばならない。釈尊は人をみて法を説いたと言われているが,医師の場合も患者によって説明の仕方を若干変えなければならないことが多い。特に患者が小児の場合,術前説明を受ける母親はお腹を痛めた子供の手術という危機にあたって母性愛の緊張が極度に高まっている。このような時には詳細な手術説明も大事であるが,それよりも望ましい結果をもたらすために全力を尽くすことを強調するほうがよい。この点では医師としてだけでなく,東洋的な表現であるが人間としての深さが大切ではないかと思う。
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