昨日の患者
慢性の膀胱炎と尿培養
坂 義人
pp.146
発行日 1993年3月30日
Published Date 1993/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413900881
- 有料閲覧
- 文献概要
44歳の生真面目そうな婦人,約5ヵ月前に頻尿,排尿痛が出現したために近くの開業医を受診。尿検査等により膀胱炎の診断を受けて抗菌薬を3日間服用。3日目までに症状が消失したので喜んで前医を再診したところ,念のためさらに4日間の抗菌薬服用を勧められ,同時に尿が無菌であることを確認するため尿の培養検査が行われた。4日後培養結果を聞きに受診したところ,尿培養が陽性であるのでさらに服薬の必要ありといわれ服薬を継続した。その後も症状はまったく無かったが,1〜2週間に1回の割合で行われる尿培養検査で,しばしば陽性の結果であったので服薬が継続された。そうこうしている間に5ヵ月が経過し,ついに近医から慢性の膀胱炎で終生治らない旨の宣告を受けた。
患者は大変心配して大学病院を受診。今までの経過を問診したところ,採尿はいつもコップに自分で採取しているということなので,当科ではカテーテルで膀胱尿を採取して検査した。鏡検の結果,赤血球も白血球も細菌もみられず尿は全く正常であった。症状もないため尿培養検査を依頼し,1週間服薬を中止した後,再度尿検査をすることとした。1週間後の検査でもやはり鏡検所見に異常なく,尿培養検査も陰性であっった。その後にもう一度検尿,尿培養検査および膀胱鏡検査をしたが異常なく,患者は大変安心して安堵の色をかくさなかった。
Copyright © 1993, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.