特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第8集
細菌検査
検体別同定検査各論
尿培養検査
熊坂 一成
1
1上尾中央総合病院臨床検査科
pp.564-565
発行日 2010年10月30日
Published Date 2010/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402104845
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異常値の出るメカニズムと臨床的意義
尿道には少数の細菌が常在しているが,膀胱内の尿は無菌である.女性は男性に比べて尿道が短いため,細菌は膀胱に侵入しやすい.細菌が膀胱に達しても排尿により細菌は迅速に排除される.著しい高尿素窒素濃度,高浸透圧,酸性を呈する尿は細菌の増殖を抑制する.膀胱粘膜表面にはムチン層が存在し,細菌の膀胱上皮への付着を防いでおり,付着しても細菌とともに上皮が剥離する.さらに膀胱上皮は細菌に反応してサイトカインを分泌し,膀胱上皮と尿中への好中球の遊走を促し細菌を貪食する.これらの防御メカニズムが破綻した場合に尿路感染症が起きる.大部分の尿路感染症は,尿道に常在しないグラム陰性桿菌(大多数は大腸菌)が尿道から膀胱に入り膀胱炎を起こす.細菌が膀胱から尿管を逆行すれば急性腎盂腎炎を起こし,重篤な場合は腎実質の膿瘍や敗血症を発症する.
一方,敗血症の原因菌が尿中から検出されることがある.黄色ブドウ球菌,真菌,サルモネラが尿から分離された場合,ほかの遠隔感染巣から,血行性に腎臓に病変を生じた可能性が高い.
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