Japanese
English
綜説
排尿障害を起こす薬物
Drugs Inducing Urinary Disturbance
跡部 治
1
,
全田 浩
1
Osamu Atobe
1
,
Hiroshi Zenda
1
1信州大学医学部附属病院薬剤部
1Department of Pharmacy, Shinshu Uiversity Hospital
pp.1031-1038
発行日 1990年12月20日
Published Date 1990/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413900210
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はじめに
薬剤による副作用として排尿障害を起こすことがあることは古くから知られているが,最近,中部労災病院泌尿器科において,1978年4月から1989年3月までの12年間に経験した薬剤が原因と考えられる排尿障害例についての報告1)によると,症例は女性より男性に多く,年齢分布は60歳以上の老齢者が大半を占めたとのことである(図1).また原因と考えられる薬剤の内訳は,鎮咳,感冒薬が最も多く,次いで鎮痙剤,消化管潰瘍治療剤などであり,この時,合併症として前立腺肥大症,感冒が対象症例の約半数に認められている(表1).この結果から,薬剤性排尿障害のリスクファクターとして,①高年齢(60歳以上),②男性,③前立腺肥大症を中心とする器質的下部尿路疾患,④脳血管障害,パーキンソン症,糖尿病等による合併症としての神経因性膀胱,を挙げている.
老齢人口の占める割合が増加し,かつ新しい薬剤が次々と開発されてくる今日,薬剤による排尿障害発症の可能性は,益々高くなるものと思われる.副作用をひきおこす可能性を持つ薬剤を予め整理しておくことは,薬剤による副作用を未然に防止するために極めて重要なことであると思われるので,以下著者らの考えに基づいてまとめてみた.
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