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がんパネル検査が保険収載され,泌尿器科の日常臨床でもがんゲノム医療が実践される時代になりました.現在,泌尿器科領域においてコンパニオン診断を伴う薬剤は前立腺癌に対するPARP阻害薬,およびMSI-highまたはTMB-highの腫瘍に対するペムブロリズマブのみですが,泌尿器がんを含む固形がんにおいて現在開発が進んでいる新薬の多くはコンパニオン診断を伴うものとなっています.がんパネル検査を提出した場合,エキスパートパネルで症例検討が行われますが,多くのエキスパートパネルでは泌尿器がんの専門家が不在のため,泌尿器がんに特有の事情や最新情報が加味されにくい状況にあります.今後,各がん種で治療がさらに複雑化するため,ゲノム検査の結果を適切に解釈し最適な治療を提供するためにはがんゲノムの知識をもった泌尿器科医が積極的にエキスパートパネルに関わっていく必要があります.また,現状,多くの泌尿器科医はがんパネル検査を依頼し,エキスパートパネルの推奨治療を確認するだけで,検査提出から治療推奨まで実際にどのようなことが行われているのかについて知らないのではないでしょうか? これはブラックボックスの入り口と出口しか見ていない状況にたとえられます.実際にはがんパネル検査からは推奨されている治療以外に多くの情報が得られており,中には重要な二次的所見など,治療推奨につながらなくても臨床判断に影響しうるものもあります.
本特集では本邦におけるがんゲノム医療の現状と展望,がんパネル検査の裏側,各泌尿器がんにおけるゲノム,遺伝子多型,遺伝カウンセリングなど幅広く泌尿器がんと遺伝子に関するテーマを扱い,泌尿器がんにおけるゲノムの「虎の巻」として活用していただけるよう企画しました.各執筆者の熱意が感じられる素晴らしい特集になりました.一人でも多くの皆様がゲノムアレルギーから脱却し,泌尿器科領域におけるがんゲノム医療の活性化につながれば幸いです.
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