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過活動膀胱(overactive bladder : OAB)は,40歳以上の日本人の14.1%,推計1040万人にあるコモンディジーズである.女性下部尿路症状診療ガイドライン1)は二階建て診療アルゴリズムを採用しており,初期診療で解決しなければ専門的診療に進む形をとっている.泌尿器科医は腹圧性尿失禁には中部尿道スリング手術(TVT・TOT)という切り札をもつが,難治性OABを紹介されても従来手立てが乏しかった.2017年度診療報酬改定で仙骨神経刺激療法の適応が認められ,2020年度にボツリヌス療法がK823-6尿失禁手術(ボツリヌス毒素によるもの)9680点として承認されたことで,選択肢が広がった.ボツリヌス療法を行うには,日本泌尿器科学会認定専門医で規定の資格セミナー(講習・実技セミナー)を修了する必要があるが,施設要件はない2).
女性泌尿器科でボツリヌス療法を導入するにあたり,基本は外来ベースで,膀胱粘膜麻酔,硬性膀胱鏡を使うことにした.ボトックスの失活は外来看護師が面倒と感じがちな行程である.適正使用指針は,「処置後,残った薬液,および薬液に直接触れた器具(注射針など)は,0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液を加えて失活させた後,密閉可能な廃棄袋または箱に廃棄する」と記載している2).下水道法・水質汚濁防止法では,次亜塩素酸ナトリウムは廃アルカリに指定されており,pH5〜9以内になるよう希釈すれば下水に流してよいとされる.200ppm以下まで薄めるとpH9程度になるため,0.5%溶液(5000ppm相当)は25倍に薄めることになる.バケツに溶液を2L入れたら50L下水に流す計算となり,水資源の無駄に心が痛む.平形プラスチック容器(タッパーウェア®)にニードルを切って浸す形なら,溶液は少なくてすむが,失活した器具類や溶液を取り出して廃棄し容器を洗う手間は残る.そこで私たちは,プラスチック手桶で倒れないよう安定させた中にチャック付きポリ袋(ジップロック®など)を広げ,その中に400mL紙カップをセットして,溶液200mLを入れて用意することにした(図).処置後にバイアル,シリンジ,ニードル(70cm,内腔に溶液を通しはさみで切る)を浸し5分以上おいてから袋を密閉し,紙カップと中の器具類・溶液を袋ごと医療廃棄物として廃棄している.外来でも手間が少ないと受け入れ好評である.
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