増刊号特集 泌尿器科処方のすべて─すぐに使える実践ガイド
10 周術期
ハイリスク患者の管理
血糖降下薬服用中の患者
寺嶋 克幸
1
1三井記念病院麻酔科
pp.262-267
発行日 2016年4月5日
Published Date 2016/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413205655
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治療方針 薬物療法の概要と狙い
近年,さまざまな血糖降下薬が発売された.一般的には,手術当日の朝から血糖降下薬の内服を中止し,食事の摂取の開始から内服を再開する.一部の血糖降下薬には中止と再開に関して特別な制限がある.例えば,メトホルミンは腎機能障害時の排泄低下による乳酸アシドーシスのリスクが増加するために,腎機能の回復を待たなければならない.
糖尿病患者の周術期管理の目的としては,糖尿病による血糖値管理と臓器・器官障害による合併症予防に焦点をあてる.脳血管障害や虚血性心疾患のリスクは2〜10倍であり,自律神経障害により低血圧からの回復は遅延する.さらに,糖尿病患者では無症候性心筋虚血の可能性が高いため,心電図などの検査所見を確認することが必要である.気道に関しても影響がある.胃内容排出時間は延長し,環軸−後頭骨関節のグリコシレーションによって頸部後屈制限(stiff-neck症候群)を来すことがある.ほかに,高血圧や肥満,慢性腎機能障害は周術期管理を複雑にするため,術前評価と個々の患者に対する周術期管理のオプションが必要である.
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