文献抄録
膀胱の非開放性損傷時の尿溢流方向と治療
pp.330
発行日 1988年4月20日
Published Date 1988/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413204719
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著者らが最近7年間に入院治療した膀胱外傷者は117名で,うち97名が非開放性の損傷者である。損傷原因はオートバイ88名,落下事故7名,下腹部打撲2名である。62名は腹膜外破裂で,うち3名は骨盤骨折を,12名は骨盤骨折と後部尿道損傷を合併し,また5名は腹膜内破裂であった。診断は250m1の造影剤による2方向膀胱撮影を行い,骨盤骨折あるいは臨床所見から必要に応じて尿道造影を施行して尿道損傷を確認した。
造影剤または尿の膀胱外溢流の方向は,単純溢流では膀胱周囲に流出するが,複雑な溢流では更に広範囲に拡散して,著者の例から部位別に頻度をみると,陰嚢部(25%),股間(8%),前腹部(8%),陰茎(6%),大腿部(3%),後腹膜腔(3%),その他(8%)となっており,全体の42%にみられた。泌尿生殖器隔膜の断裂では陰嚢への溢流が多く,89%にみられ,また股間,陰茎への流出もある。鼠径管を介して陰嚢への溢流は11%で,Colles' fas-cia損傷による流出は前腹壁から更に後腹膜上方へ広がる。骨盤骨折部より周囲への流出は35%にみられ,しばしば骨折部と反対方向への流出もある。62名中骨折片の膀胱内突出は1名もなかった。
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