交見室
胸腹部連続正中切開法について,他
岡田 清己
1
1日本大学泌尿器科学教室
pp.506-507
発行日 1986年6月20日
Published Date 1986/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413204294
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本誌40巻4号,井口先生らの「胸腹部連続正中切開法の経験」を拝読いたしました。癌に対する手術は,機器の開発,全身状態に関する管理,麻酔法および手術手技そのものの進歩に伴い年々aggressiveになつてきていることは事実です。これに対する反論もあるでしようが,完治を求める意味では拡大手術になることは当然のことと言えると思われます。したがつて,井口先生らは根治性を求めるため,また手術を安全に行うため,今回胸腹部連続正中切開法を試み,成功をおさめていることに敬意を表します。先生の論文によりますと,本法は,1)広い視野がえられ,胸腔内腫瘍も後腹膜腫瘍と共に摘出可能であること,2)特に後膜腹腫瘍の摘出は安全に施行できること,3)両腎の手術を一期的に行うことができること,などが利点であると考えます。
残念ながら,われわれは本切開法はまつたく経験なく,またここまで拡大手術を行わなければならない症例にも遭遇しておりません。また,あまりにも大きな切開なので戸惑いを感じます。今後,このようなアプローチも必要となつてくるかもしれませんが,両側開胸に対する処置のみでなく,心嚢を開いたときの処置などは未経験なため胸部外科医の助けをかりなければならないと思われます。
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