Japanese
English
綜説
ターミナルケア(末期医療)とその問題点
Terminal Care and its Problems in Japan
村上 國男
1
Kunio Murakami
1
1国立療養所東京病院外科
1Department of Surgery, Tokyo National Chest Hospital
pp.191-200
発行日 1984年3月20日
Published Date 1984/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413203760
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I.ターミナルケアの概念
1.用語と定義
わが国においては10年ぐらい前から,欧米では約20年前から,「死」を学問的に考えようとする機運が高まつた。これと相前後して一般市民の間にも死に対する関心が高まり,あらゆる角度から死が話題になりつつある。アメリカでは,素人の書いた癌闘病記から,専門家の書いた,たとえばキュブラー・ロスの著書1)までが,年間100冊ぐらいずつ出版され,何れもが高い売れ行きを示しているとのことである。この傾向はわが国でも同じである。話題の対象は,極めて個人的な体験記や,宗教的色彩の強いものがあるかと思えば,ホスピス・病名告知あるいは心理学の分野のものがあり,更には鎮痛療法に関する純粋に医学的なものまである。このような幅広い死に関する研究・学問を総称してサナトロジーThanatologyという。邦訳はまだ定着したものがないので,仮に「死学」としておくが,一般的には片仮名でサナトロジーと書かれている。
サナトロジーには,宗教的なもの,法律に関するもの,自殺に関するものなど実に多種類のものが含まれるが,この中でいろいろな意味で臨床と結びついた死のうち,予め予測された死に対する医療をターミナルケアTerminal Careとしてまとめて考えると便利である。ターミナルケアは,一般には末期医療と訳されているが,同じ意味で死の臨床,死の医学,臨死医療,晩期医療等々の訳語を用いる人もいる。
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