手術手技
膀胱全摘除術のコツ
川井 博
1
Hiroshi Kawai
1
1日本医科大学泌尿器科学教室
pp.985-986
発行日 1977年11月20日
Published Date 1977/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413202448
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一般に膀胱全摘出術は膀胱癌症例でも,多発性乳頭腫症,再発性乳頭状癌,あるいは大型広基性膀胱癌,組織悪性度の高い癌に対して適応とされており,この際は膀胱と腹膜の一部,前立腺・精嚢腺・下部尿管・精管の一部を一塊として摘出するのが普通である。膀胱全摘出術では症例に応じて一次的にせよ二次的にせよ尿路変更術も行なわれるので比較的患者に与える手術侵襲も大きいので,術前に患者の全身状態を十分把握しておくことが大切である。すなわち患者の血液一般性状,生化学的性状,腎肝機能,心循環系あるいは糖尿病その他の合併症などについての有無を精査し,必要に応じて術前の体液補正,合併症のコントロールを十分にすることが重要である。
膀胱全摘出術の要点としては,まず術中の出血量を可及的に少なくするように心がけると共に,手術野を感染膀胱尿や腫瘍細胞の散布などの汚染から守り,術中に腹腔内諸臓器や骨盤腔内リンパ節転移などの有無について視触診で検査し,転移,腫脹を疑われるリンパ節がある場合には摘出する。私としては松本博士の述べておられる骨盤腔リンパ節廓清法(本誌26巻835頁参照)は特に施行していない。術後リンパ節転移が組織学的に確認された場合には抗癌剤投与と放射線照射を実施することにしている。
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