交見室
膀胱上皮内癌と尿細胞診について/前立腺精嚢腺全摘について
田崎 寛
1
1慶大医学部泌尿器科
pp.458-459
発行日 1977年5月20日
Published Date 1977/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413202363
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膀胱上皮内癌の綜説(瀬戸輝一・松本恵一著)が載つた同じ31巻3号で松田氏らの「膀胱上皮内癌における尿細胞診の意義」を拝読した。はじめの綜説の中で瀬戸氏らは真性原発性上皮内癌とは本来slow grow-ingの長期停滞型膀胱上皮癌であることの見解を示され,浸潤癌へ発展する症例は内方浸潤型との合併随伴型が大部分であるとしている。私もかねてから上皮内癌とはそのように解釈すべきと考えてきたが,瀬戸氏自身も緒言でのべられている通り,膀胱癌の個々の症例については理論で解決しがたい現実の問題が多く介在していることも確かである。しかし,この際上皮内癌(carcinoma in situ)の概念の統一をはかること,その臨床的意義についても再検討に急を要するのではないかと考える。
すなわちわれわれが最も知りたいのば上皮内癌とば一体何なのか。浸潤癌に変わりうるというならばどのような機転でいつ変わるのか。その間に尿の細胞診が単に陰性,陽性だけでなく量的,質的,経時的に如何に変化するかといつたことである。松田氏らの症例の細胞診が全例陽性であつたのはたまたま100%であつたのかどうか。というのはわれわれは常にclass Ⅲに悩まされており,また2〜3回繰り返しても誤陽性はありうることも経験しているからである。また尿細胞診陽性,組織診陰性と診断される可能性があるからといつて細胞診が組織診に優るということはあり得ないと考える。
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