Japanese
English
綜説
腫瘍の免疫療法
Immunotherapy Against Cancer
折田 薫三
1
Kunzo Orita
1
1岡山大学医学部第一外科学教室
1Department of Surgery, School of Medicine, Okayama University
pp.731-741
発行日 1976年9月20日
Published Date 1976/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413202216
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泌尿器科領域の癌にも免疫療法が有効であろうか。一外科医の私にとつては極めて難解な設問であるが,昨年岡山で開かれた,新島教授主催の日本泌尿器科学会でお話しさせていただいた続きとして,蛮勇を奮つて広く癌と免疫の立場から記述したい。FoleyやKlein,本邦では武田勝男教授らにより発癌性化合物による誘発癌にまず腫瘍特異抗原が証明され,1970年までにはほぼすべての動物癌には宿主には無い腫瘍特異移植抗原(TSTA)あるいは腫瘍関連抗原(TSA)がその膜面上にあることが明らかとされた。発癌性化合物での誘発癌は個性が強く,同一化合物で同系動物に誘発させた同一の組織型をもつた腫瘍でも,それぞれ別個のTSTAをもち,共通のTSTASやTSAをもつものは稀れである。腫瘍性ウィルスによる腫瘍には,系統や種をこえてウイルスに共通の安定した共通抗原のあることが知られている。しかも,担癌宿主は主としてT—リンパ球を通じてTSTAを認識し,たとえ腫瘍が増殖状態にあつても,ある時期には宿主の免疫リンパ球が自己の腫瘍に拒絶作用(抗腫瘍性)に働き腫瘍の増殖を抑えている。これがいわゆる共存あるいは随伴免疫concomitant immunityである。1970年以降人癌においても数多くの腫瘍に共存免疫のあることが明らかとされている。しかも多くの人癌では同一組織型をもつものの間では共通抗原のあることが知られている1〜3)。
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