Japanese
English
綜説
尿路性器腫瘍の免疫学的診断法
Immunological Diagnosis of Urogenital Tumor
坂下 茂夫
1
,
黒川 一秀
1
,
平井 秀松
2
Shigeo Sakashita
1
,
Kazuhide Kuroda
1
,
Hidematsu Hirai
2
1旭川医科大学泌尿器科
2北海道大学医学部第1生化学
1Department of Urology, Asahikawa Medical College
2The First Department of Biochemistry, School of Medicine, Hokkaido University
pp.463-471
発行日 1976年6月20日
Published Date 1976/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413202166
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はじめに
癌の免疫学的診断には,癌に関連した抗原を免疫化学的にin vitroで検出・定量しようとする試みと,癌患者に自己の癌に対する免疫応答があるという前提に立ち担癌患者の免疫機能の検索により癌の診断に役立てようとする試みがある。このうち後者は研究室レベルでの癌研究の発展に貢献しつつあるが,癌の診断,病態の把握,治療効果,予後の判定,経過の観察などの臨床的応用には現在のところ前者の方がより大きな役割を果している。本稿では前者の立場に立ち泌尿器領域の悪性腫瘍の診断を中心として述べることにする。
癌は数多くの癌関連抗原を産生すると考えられるが,免疫学的診断法確立の第1歩は,より良い癌関連抗原を発見することである。理想的な癌関連抗原の条件としては,1)容易に得られる試料(たとえば血液,尿など)に含まれること,2)抗原が正常人または非癌患者に比し癌患者で大量に検出されること,3)腫瘍発生臓器に対して特異性があることなどが要求される。これらの条件をある程度満足するものとして現在よく知られている癌関連抗原にα-フェトプロテイン(AFP),carcinoembryonic antigen(CEA),β-フェトプロテインなどがある。これらの癌関連抗原は胎児期に存在する抗原と共通性を持つ点が特徴的であり,carcinocmbryonic proteinsと総称されるが,癌化することにより胎児型代謝系が復活する点が興味深い。
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