文献抄録
腎杯軸症候について
pp.137
発行日 1972年2月20日
Published Date 1972/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413201334
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腎実質の腫瘤か,腎外腫瘤かのレ線的鑑別は通常の排泄性腎盂撮影でしばしば困難なことがある。この際のX線鑑別の要点は腎盞・腎杯像の破壊変形像の有無であるが,この所見が見られない時には鑑別は非常にむずかしい。そこで著者らは腎杯軸の変位如何を観察することで,後腹膜腔の腫瘤の位置を知ることができるとしている。正常腎では腎の上下極を結ぶ線は腰腸筋縁と平行である。腎の長軸は体の正中線の20度の角をなしている。また腎杯の最上・最下を結ぶ腎杯軸も,腎長軸および腰腸筋縁と平行となつている。そこで腎実質からの腫瘤,たとえば嚢腫,水腎,重複腎盂などでは腎軸よりも腎杯軸の方が一層変位するが,腎外腫瘤の場合には腎軸と同様に腎杯軸も同等に変位するものである。著者らはこの所見について,腎癌の2例と後腹膜肉腫,副腎皮質腺腫の各1例についてレ線的所見を述べている。
後腹膜腔には副腎・膵の一部消化管をはじめ大動静脈・リンパ節・神経系などからの腫瘍はいずれも腎のレ線像に変化を与えるし,肝・副腎の腫瘤は腎を下・側方へ圧排する。また腎軸の正常変位幅も相当広く,病的な変位との区別が困難なこともしばしばであり,加えて腎自身の変位回転などがあるために更に困難となることがある。
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