文献抄録
尿管による腹水の誘導法
pp.663
発行日 1969年8月20日
Published Date 1969/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413200734
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尿管を導管として腹水を体外へ排泄する考えは1943年Fergusonによつて初めて試みられたが,彼の方法は1側の腎摘後その残存尿管を腹膜に吻合したもので,腹水の誘導には成功したが,腎摘術を施行するために一般には行なわれなかつた。しかし最近では尿管・尿管吻合術が可能になり総腎機能を低下させることなく,残存尿管を腹膜へ吻合することができるようになつたので著者等は動物実験的にその可能性を実証している。実験は15頭の成犬を2群に分け,1群の9頭は尿管・尿管吻合後に残存尿管を腹膜に吻合し,別の1群6頭については1側の腎摘出後に尿管を腹膜に吻合した。すべての実験犬は3日から42日の間に剖検した。結果は第1群の9頭について見ると4頭は尿管吻合部からの尿漏により腹膜炎をおこしていたが,5頭は吻合部は完治していた。第2群の6頭については全く合併症は見られなかつた。尿管腹膜吻合部は8頭は正常に開口していたが,7頭は腸管ないし腸管膜により閉塞されていた。
従来腹水の体外誘導については数多い手術法が行なわれているが,尿路からの誘導法はほとんど試みられていない。Higgins,Andersonはじめその他の人々により尿管・尿管吻合術が開拓され容易に行なわれるようになつたので,今後は尿路による腹水の誘導法の可能性は充分あると考えられる。
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