特集 外科患者・薬物療法マニュアル
Ⅳ.併存疾患をもつ外科患者の薬物療法
6.肝・胆・膵
腹水
岡部 和彦
1
1聖マリアンナ医科大学第2内科
pp.832-834
発行日 1986年6月10日
Published Date 1986/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407209403
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□基本事項
1.腹水の成因と性状
1)成因:肝疾患に伴う腹水は,肝硬変,Budd-Chiari症候群や悪性腫瘍でみられる.肝硬変に合併する例が圧倒的に多い.肝硬変による腹水の成因は,①後類洞性門脈圧亢進に伴う肝うつ血,②低アルブミン血症による膠質浸透圧の低下,③二次性高アルドステロン症,④抗利尿ホルモン(ADH)の血中増加,⑤近位尿細管でのイオン・水再吸収の亢進などである.それらのうち,①による肝リンパ液の腹腔内漏出が主な成因である.
2)性状:漏出液で,一般に淡黄色透明である.蛋白濃度は,平均2.0g/dlであるが,その幅は0.6〜6.0g/dlと大きく,細胞成分は少ない.細菌性腹膜炎の合併例では,腹水は混濁する.乳糜腹水は,主に悪性腫瘍によるリンパ管の圧迫・浸潤により生じ,乳糜状で混濁し,トリグリセリド含量が多い.癌性腹膜炎では,血性腹水や,腫瘍細胞を認めることがある.
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