グラフ 産婦人科とCT・9
腹水
関場 香
1
,
赤松 信雄
1
Kaoru Sekiba
1
,
Nobuo Akamatsu
1
1岡山大学医学部産科婦人科学教室
pp.562-564
発行日 1987年9月10日
Published Date 1987/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207642
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X線は生体内で減弱していく。その減弱の程度は組織によって異なっている。減弱の大きさをX線減弱係数,いわゆるCT値と呼ぶ。水のCT値を0に設定し,X線の減弱がない場合を−1,000Haunsfield Unit (HU)とする。腸管内ガス等の空気中ではX線の減弱は殆どなく,ほぼ−1,000HUである。子宮筋層などの軟部組織の減弱は水よりもやや大きく,40〜50HU程度である(soft tissue density)。一方,脂肪は水よりも小さい減弱を示し,−90〜−80HUである(fat density)。液状成分でも血液はX線の減弱が大きく,40〜50HUである。腹水は水に近いものから血液成分などを多く含むものまであり,そのCT値は10〜30HU程度である(fluid density)。
X線CTは通常仰臥位で施行される。腹水は腹腔内に貯留する液体であるため,仰臥位で低い部位でよく観察される。最も低い部位はDouglas窩であり,周囲臓器に囲まれて外側に張りの乏しいfluid densityの領域占拠病変(space occupying lesion:SOL)が観察される(図1)。腹水量が増加すると腸管が腹水,fluid densityのSOL中に浮遊して観察される(図2)。更に,肝周囲にもfluid densityが認められるようになる(図3)。腹水を伴う疾患として婦人科領域で多い疾患は,卵巣の悪性群や中間群等の悪性腫瘍である。
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