シンポジウム 前立腺癌の治療と予後・1
ホルモン療法の方法について
竹内 弘幸
1
Hiroyuki Takeuchi
1
1東京医科歯科大学医学部泌尿器科
pp.443-446
発行日 1969年6月20日
Published Date 1969/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413200689
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Ⅰ.緒言
前立腺癌のホルモン療法は,1940年初頭Hugginsらが臨床的に実施して以来すでに30年近くなるが,まだ治療法として確立するに至つていない。それは,この治療法の癌に対する作用機序がほとんど判つていないということでもある。
一般に,ホルモン反応性癌に対するホルモンの治療的意義は,癌細胞の増殖を促進するホルモンの除去,および逆のホルモン作用を有する物質を投与することにより癌細胞の生活機構を阻害することである。前立腺癌におけるいわゆる抗男性ホルモン療法という考えは前者に立脚するものである。しかし,単なる去勢術あるいはFSHの分泌抑制を目的としたestrogensの投与は,周知のように当初期待されたほどの治療的効果はない。また,estrogensの癌細胞に対する直接作用は,androgen依存性のほとんどない老婦人の乳癌や下垂体のエオジン好性腺腫等における効果から推測されるところであるが,有効量という点に関しては解明されておらず,ここに癌のホルモン反応性からの離脱という問題が惹起するゆえんがある。
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