文献抄録
膀胱粘膜の置換とその発癌態度/ベトナム戦争における泌尿器損傷
pp.644,645
発行日 1967年7月20日
Published Date 1967/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413200209
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膀胱の乳頭状腫瘍は移行上皮粘膜から発生しかつ再発を繰返しつつ悪性化をしてゆくのが特徴である。そこで理論的には膀胱の粘膜を他組織で置換代用をすれば発癌防止の効果を期待し得ると考えられる。著者は1956年に膀胱粘膜を皮膚にて置換した犬ではβ-ナフチルァミンの投与で膀胱に発癌しないことを報告した。その後犬による基礎実験で膀胱粘膜を腹膜,口腔粘膜,皮膚等にて置換し得ることを知つたので,今回は42頭の雌成犬を用いて上記組織による膀胱粘膜置換手術および回腸膀胱造設術等を施行し生存成犬にβ-ナフチルアミンを4ヵ年の長期にわたつて経口投与し発癌態度を観察したので報告する。42頭中皮膚置換20頭,口腔粘膜6頭,腹膜9頭,膀胱回腸吻合7頭,の手術を施行し術後生存したのが30頭。これらの成犬に対して初めの2年間は毎日500mgのβ-ナフチルアミン,次の2年間は1000mgに増量して経口投与しつつ飼育した。この間17頭が死亡したが膀胱には発癌を見なかつた。結局4カ年の長期間生存した13頭について見ると膀胱に移植した皮膚,口腔粘膜,腹膜,腸粘膜には全く腫瘍の発生を見なかつたが,移植組織を囲む残存膀胱粘膜には13頭中10頭にGradeⅡの移行上皮癌が発生していた。
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