連載 公衆衛生ドキュメント―「生きる」とは何か・7
生み残されたベトナム戦争孤児たち
桑原 史成
pp.758
発行日 2004年10月1日
Published Date 2004/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100488
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ベトナム戦争の終結は1975年だが,それまでの約10年間にアメリカ軍は南ベトナムの,ほぼ全域に布陣していた.南北のベトナムが統一する2年前の1973年に,約50万人のアメリカ軍は撤収してベトナムを去ったが,兵士たちが残した戦争孤児は,南ベトナムの各地で生み残された.その正確な数字は公表されていない.が,海外のジャーナリズムの推測では,数万人とされる.孤児を出産した母親はベトナム女性であることは言うまでもないが,その多くの女性たちが,戦乱の中,孤児たちを養育することは不可能だった.それに統一後の社会主義国の中で,敵兵の白や黒の肌色の子どもを連れて歩くことは,憚れたようである.
一方,ベトナム戦争に派兵していた韓国軍兵士の戦争孤児の場合は,東洋人の黄色のため,孤児院などの施設に引き取られる数は少なかったようである.ベトナム戦争の終結の直前に,アメリカ政府は,戦争孤児たちを首都のサイゴンから航空機でアメリカに移送している.里子としてアメリカに渡った子どもの数は,全体の10%程度とされる.
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