随筆
印象に残つた症例
中川 小四郎
1
1中川医院
pp.290
発行日 1967年3月20日
Published Date 1967/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413200134
- 有料閲覧
- 文献概要
過日,本誌「臨床泌尿器科」編集室から随筆の原稿を送るようにとの依頼があつたので,取り敢えず承諾のご返事を差し上げて置いたわけだが,さて筆を執つてみると,過去数十年間にわたる筆者の臨床生活を通じ,印象に残つた症例もしくは誤診の体験は,蓋し枚挙に遑がないであろうことを告白せざるを得ない次第である。
かようなわけで,以下記載する2〜3の症例はただたまたま思い出されたものであり,かつこれらは特に印象的のものというわけではなく,筆者が未熟な医師としての時代におけるものであつて,今から考えると極めてありふれたものに過ぎないが,ここに貴重な紙面をかりて,古い過去を偲び,併せて現在の進歩せる医学医術に対し,今更のごとくその認識を新たにしたいと考えたわけである。ここに古い過去とは筆者が大正9年頃から約10年間にわたり,岡山医専から岡山医大に勤務していた頃のことであつて,以下の記事はもとより,関係病歴などを根拠にしているわけではなく,従つて患者の性別を除き,初診年月日,年齢,既往歴に関する正確な事項は全く不明というの外なく,言わば非学術的漫筆にすぎないものであることを,予めご承知おき願いたい。
Copyright © 1967, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.