書評
「ソーリー・ワークス!―医療紛争をなくすための共感の表明・情報開示・謝罪プログラム」―ダグ・ヴォイチェサック,ジェームズ・W・サクストン,マギー・M・フィンケルスティーン 著/前田正一 監訳/児玉 聡,高島響子 翻訳
田中 まゆみ
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1北野病院・総合内科
pp.517-518
発行日 2013年6月20日
Published Date 2013/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413103247
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2012年10月に日本脳炎予防接種後の急死例が大々的に報道された。このケースでもそうだが,医療事故には複雑な要因がからんでおり,過誤の有無,過誤が悪い結果(死亡・後遺症など)の唯一の原因であったのかなど,すぐには結論が出ないことが多い。しかし,被害者にとっては「予期しない悪い結果」の原因として人為をまず疑うのは当然であろう。もし初期対応が不適切であると,加害者vs. 被害者の対立構図が生じ,訴訟に至ってしまう。
しかし,医療訴訟に勝者はいない。信頼を裏切られた患者家族だけでなく,疑われたうえ「訴訟中は何もしゃべるな」と厳命される医療者もまた苦しむ。司法解剖がされたとしてもその結果は遺族にも医療者にも知らされることはないので,再発防止にも役立たない。最終的には医学的に医療過誤とはいえないという結論で終わることも多いが,それを「医療とはもともと不確実で未熟なものであり,司法でそれを裁くには限界がある」というふうにではなく,「医療訴訟では患者側が勝つことは難しい」というように受け止められてしまう。
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