書評
—Paul Farmer 著 岩田 健太郎 訳—熱、諍い、ダイヤモンド
本田 仁
1
1東京都立多摩総合医療センター感染症科
pp.1255
発行日 2022年7月10日
Published Date 2022/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402228354
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この書籍は西アフリカで起こったエボラウイルス病(EVD)アウトブレイクの歴史書です.前半はEVDのナラティブレビュー,中盤は西アフリカの歴史,政治とエボラウイルス感染症のアウトブレイク発生の関係,さらには本の題名にもなっている,諍いとダイヤモンドとEVD(熱)との関係,終盤はシエラレオネの現状やEVDについての先進国やMSFなど非政府組織機関の関わりについて,社会医学の観点から鋭い考察がなされています.
Part Ⅰでみる,EVDのアウトブレイクが起こっていることの記述はとても生々しく,当時の現地の惨状が伝わってきます.読んでいて心臓の鼓動が早くなる内容です.エボラ出血熱と呼ばず,なぜ,Ebola viral disease,エボラウイルス病(EVD)と呼ぶのか,患者は実際どのような臨床像を呈するのか,米国感染症業界のジャイアントである,アントニー・ファウチ医師との友情,さらにはシエラレオネでEVDの対応で命を落とした医療従事者の話,臨床的に有効と思われる点滴などの支持療法の必要性とそれを実施する上での資源が限られた環境における障壁などが細かく記載されています.
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