エディトリアルコメント
症例報告「小腸損傷を合併した経皮的膀胱瘻造設」(澤崎晴武・他)へのエディトリアル・コメント
藤岡 知昭
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1岩手医科大学医学部泌尿器科学教室
pp.1049
発行日 2012年12月20日
Published Date 2012/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413102978
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経皮的膀胱瘻造設術は,泌尿器科研修医の第一歩となる基本処置・手術です。エコーガイドが普及する以前にも,膀胱瘻造設は経皮的針穿刺により施行されていました。この場合,最も重篤な合併症は腸管損傷であり,その原因として膀胱の充満が不十分であることや穿刺の位置が不適当なことが考えられるので,その予防策として,充満した膀胱を触知することが必須とされ,手術台や硬い処置台上で巻いたタオルなどにより臀部を拳上した状態で施行するように指導されてきました。また,穿刺を断念し,恥骨上の小切開により直視下に腸管を避けていることを確認し,膀胱瘻を造設する必要性の存在も指摘されていました。今日では,エコーガイドによる穿刺が標準的になり,経皮的膀胱瘻造設術は気軽な泌尿器科処置と捉えられているような気がします。しかし,場合によっては重大な危険を伴う手術であることに変わりありません。
この症例報告では,入院初期の段階のCT検査で「膀胱前に腸管を認めた」とのことです。右仙骨離断,恥骨骨折,右大腿骨折がありますが,小切開による開放性膀胱瘻造設の適応を考えなかったのでしょうか。また,どのような,腸管損傷回避のための工夫をなされたのでしょうか。知りたいところです。さらに,「膀胱瘻交換の際,洗浄液が腸液様」であることを確認したにもかかわらず,なぜ再度エコーガイド化に膀胱瘻造設を選択されたのでしょうか。先の穿刺による腸管の損傷部位は自然治癒すると考えられたのでしょうか。再度膀胱瘻造設施行前に開腹手術が必要であったのではと考えます。
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