Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
[1]はじめに
尿失禁や膀胱瘤に対する治療は従来から泌尿器科診療の一分野として行われてきたが,近年,膀胱瘤は骨盤臓器脱というentityの中で,また,尿失禁の中でも特に女性の腹圧性尿失禁は骨盤臓器脱とともに女性骨盤底機能障害というentityの中で捉えられるようになってきた。すなわち,泌尿器科と産婦人科の境界領域であるfemale urologyあるいはurogynecologyと呼ばれる分野の知見が充実してきた。
これらの疾患の診療にあたっては,この領域に関する最新の知識をもって適切な診断と適切な術式選択を行うこと,そして手術を確実に実施し得る技術を習得することが重要である。特に新たに骨盤臓器脱の手術を開始するにあたっては,自身の施設において婦人科医と良好なコミュニケーションを築いておくと診療そのものがスムーズに進められる。
腹圧性尿失禁に対する術式,骨盤臓器脱に対する術式は従来から数多くの方法が提唱され実践されてきた。つまり,決定打といえるものがなかった,ともいえるわけである。
本項で取り上げる「メッシュを使用した経腟的手術手技」に関しては,まず1994年にUlmstenが報告したTVT(tension-free vaginal tape)手術が,その良好な長期成績,低い侵襲などから世界的に普及し,その後のTOT(transobturator tape)手術とともに現在では「メッシュを使用した中部尿道スリング手術」は,腹圧性尿失禁に対する標準術式と認識されている。
メッシュを使用した骨盤臓器脱の修復術についても,軟らかく感染に強いtype 1メッシュが利用可能となり,2004年のDebodinanceらによるTVM(tension-free vaginal mesh)手術の報告以来,急速に普及しつつある。一方で,特に,骨盤臓器脱に対する外科用メッシュを用いた経腟手術に関して,2011年7月13日付けで米国食品医薬局(FDA)から注意喚起の通知が発信されている。米国の実情はわが国とは異なる点を考慮する必要はあるが,推奨事項に関して注意すべきと思われる。
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.