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[1]はじめに
日本でクリニカルパス(クリティカルパスとも呼ばれる)が一般的になり久しい。導入に奔走された世代,すでに導入され利用しているだけの世代など,さまざまな先生方がおられると思う。クリニカルパスの歴史を紐解くと,もともとは1985年に米国の看護師であったカレン・サンダースによってクリニカルパスの運用が開始され,1992年にはDRG(diagnosis-related group)導入によって全米に広く利用されることとなった。本邦では1990年半ばから使用され,その後全国に広まったことはいうまでもない。1999年6月には日本クリニカルパス学会が設立された。2007年3月に全国で行われたクリニカルパスの実態調査において,クリニカルパスの導入率は92%に至っており1),10数年で広く浸透してきたことがうかがえる。では,クリニカルパス導入によって,どのように医療現場が変化したのであろうか。2010年に行われたクリニカルパス学会によるアンケート結果からは,パス導入によって達成された要件の上位として,医療ケアの標準化(70.9%),記録などの業務改善(67.6%),チーム医療(47.2%)などが挙げられている2)。
さて,クリニカルパスは瞬く間に全国に展開したが,泌尿器科領域での利用状況はどのようになっているのであろうか。泌尿器科は他科と比較して予定期間内の入院治療が多く,クリニカルパスを導入するには最も適した科であることにはお気づきかと思う。先に挙げた2010年のアンケートでも,積極的にパスが導入されている診療科の上位に泌尿器科が位置していた。前立腺針生検,経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt),体外衝撃波結石破砕術(ESWL)などに代表されるクリニカルパスは当初から導入され,全身麻酔症例である前立腺全摘出術や腎摘出術に対しても利用され始めた。やがて病院での業務は電子化が進み,紙運用していたクリニカルパスを,コンピュータ画面上での運用に変更した施設も多いと予想される。このようにクリニカルパスが導入され始めた頃から状況は変化し,クリニカルパスの改善や電子化へ適応が求められる時代に移行してきた。このような現状を踏まえ,本項では紙パスから電子化移行期における問題点,これから求められる改善点,そして地域連携を含めて外来部門まで適応が広がっている泌尿器科クリニカルパスについて後述する。
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