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私は2008年11月に開催された第22回日本EE学会総会において,「泌尿器科内視鏡の歴史」という教育特別講演を担当した。その際,わが国の第1号膀胱鏡として,1919年(大正8年)第8回日本泌尿器科学会総会で坂口勇先生が発表した膀胱鏡と同型のものとして,株式会社武井医科光機製作所(以下,武井医科)から提供された同社に現存する最古の膀胱鏡の写真(図1)を示した。われわれが若いころNitzeの検査用膀胱鏡として慣れ親しんだものであり,なんの躊躇もなく提示した。ところが2011年4月に名古屋で開催された第99回日本泌尿器科学会総会において,「坂口勇先生の国産第1号膀胱鏡」として展示されたもの(図2,印西市立印旛医科器機歴史資料館提供)を見て驚いた。私が示したものと漏斗部が明らかに違う形をしている。本当の第1号膀胱鏡の形はどうであったのか? という疑問が生じた。
そこで上記歴史資料館を訪問し,展示されている古い各種膀胱鏡を実際に手にとってみると同時に,文献的にも検討した。その結果,
①武井医科では内視鏡の漏斗部外側に,製造順に通し番号をつけており,図1の膀胱鏡は113号,図2の膀胱鏡は69号であり,明らかに製造順では69号のほうが古い。
しかし,
②図2は坂口勇先生の論文(日本泌尿器病学会雑誌9:388,1920)にある図の漏斗部と明らかに違い,図1のそれは同型である。
③資料館にある膀胱鏡の接眼部と,図2の膀胱鏡の漏斗部の蓋を開けて中に見える接眼部がまったく同じであり(図3),漏斗部の形は蓋を確実に固定するためのものである。
④武井医科の創始者,武井勝氏が膀胱鏡製作前に試作していた上顎鏡の漏斗部が図1と同型である。
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