書評
「「病院」の教科書―知っておきたい組織と機能」―今中雄一 編
堺 常雄
1,2
1聖隷浜松病院
2日本病院会
pp.446
発行日 2011年6月20日
Published Date 2011/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413102412
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わが国は国民皆保険のもとで国民の健康状態を良好に保ち,世界の中でも高い評価を得てきました。しかしながら医療を取り巻く環境の変化,特に少子・超高齢社会の到来,永年の医療費抑制政策などの影響で,「医療崩壊」といわれる状況になっています。そのような中で持続性のある社会保障制度を維持するためには,財源の確保と病院医療の再生が喫緊の課題です。
病院は他の業界と異なり専門職集団を多く抱え,縦の連携が強い組織といえます。しかも十分に情報が共有されておらず,情報の非対称がいわれ,医療全体がブラックボックスとなっています。また病院を取り巻く環境の変化として,疾病構造の変化,診断・治療の高度化・専門分化があります。このような状況に対応し改善する方法として組織横断的な活動,チーム医療の推進,情報の“見える化”などが考えられ実践されていますが,そのためには病院の組織と機能を広く知ってもらい,多くの方々に病院運営に興味を持ち理解をしていただくことが重要です。残念ながらこのような視点で病院を紹介する本は今までにほとんど存在していなかったといえます。その意味でこのたび,今中雄一教授(京都大学大学院医学研究科医療経済学分野)のグループから本書が刊行されたのはまさにタイムリーなことであり,病院の経営に携わるものとして歓迎するところです。
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