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書評 診療情報の意義と役割を明らかにした大著―日本診療情報管理学会 編『診療情報学』
高久 史麿
1
1自治医科大学
pp.147
発行日 2011年2月1日
Published Date 2011/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101895
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平成17年4月に施行された個人情報保護法によって,患者の個人情報は原則として患者自身に帰属するものであることが明示された.一方,病院医療の現場では,チーム医療の推進のために,診療に関する情報の一元化と共有化が最近特に求められるようになっている.今回,医学書院から日本診療情報管理学会の編集による『診療情報学』が刊行された.本書の目的は,医師,看護師をはじめとする医療従事者が記載,作成する記録や取り扱う情報を「診療情報」として体系化することに関する基本的な事項について解説し,同時にその体系化の問題点や今後の課題を示すことによって,診療情報の意義と役割を明らかにすることにある,と編集委員の大井利夫氏が本書の序の中で述べられている.
現在のように,医療のすべての分野で高度化が進み,各種の医療専門職が患者を中心に医療を展開するチーム医療の場にあって,安全で質の高い医療を遂行するためには,正確な診療情報を速やかに医療従事者間で共有することが絶対的な条件となっている.しかし現実には,診療情報の収集,管理保管,その活用については多くの解決すべき問題点があり,統一した方式や知識が未成熟の状態にあるため,診療に関するデータは数多くあるが,本当に伝えるべき情報が少ない,いわゆるData-Rich-Information-Poor Syndrome(DRIP Syndrome)の状態にあると言わざるを得ないのが現状である.
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