特集 こんなときどうする!?―泌尿器科手術のトラブル対処法
Ⅳ 開腹手術
■根治的前立腺摘除術
099 前立腺表面の静脈を損傷してしまった
矢野 仁
1
,
遠藤 匠
1
,
神谷 直人
1
,
鈴木 啓悦
1
Masashi Yano
1
,
Takumi Endo
1
,
Naoto Kamiya
1
,
Hiroyoshi Suzuki
1
1東邦大学医療センター佐倉病院泌尿器科
pp.267-269
発行日 2011年4月5日
Published Date 2011/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413102347
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Q 根治的前立腺摘除術を開始した症例。前立腺を骨盤底筋膜から剝離しているときに前立腺表面の静脈を損傷してしまい,以後の操作が困難になってしまった。
[1]概 説
前立腺周辺では静脈は動脈とは伴行せずに,発達して表層で静脈叢を形成する。第1層は浅中心静脈で骨盤筋膜の外に出ている。第2層は前被膜静脈と前外側被膜静脈で,これらは合流し,左右の前立腺静脈叢を形成し,筋膜内側にある。やがて,深陰茎背静脈,内陰部静脈と合流する。第3層は前立腺被膜下からの血液を受ける小静脈である(図1)。
筆者らは主に逆行性前立腺全摘を行っており,以下の内容はそれに順ずる。
ツッペルや吸引管などを用いて前立腺周囲の脂肪組織を取り除き,左右の内骨盤筋膜を露出し骨盤筋膜腱弓に沿って,電気メスなどを用いて筋膜を束ねやすいようにスカートのように切開し,前立腺被膜から肛門挙筋を剝離する。この際,前立腺周囲の静脈を損傷して出血をきたし,以後の操作に支障をきたすことがしばしばある。
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