特集 こんなときどうする!?―泌尿器科手術のトラブル対処法
Ⅱ 体腔鏡下手術
■後腹膜鏡下根治的前立腺摘除術
048 両側尿管口を切断してしまった
伊藤 敬一
1
Keiichi Ito
1
1防衛医科大学校医学研究科泌尿器科学講座
pp.136-138
発行日 2011年4月5日
Published Date 2011/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413102294
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Q 後腹膜鏡下根治的前立腺全摘除術を開始した症例。膀胱頸部を切除しすぎて,両側尿管口を切断してしまった。
[1]概 説
後腹膜鏡下根治的前立腺全摘除術(EERP)における膀胱頸部温存は重要なステップであり,この操作の出来が膀胱尿道吻合の容易さや吻合の質にかかわってくる。膀胱頸部を形よく温存したいが,時として頸部が大きく開放し尿管口が吻合部に近くなることがある。開放手術でも同様の状況がしばしば起こるため容易に想像はつくと思われる。特に,大きい中葉肥大の症例や経尿道的前立腺切除術(TURP)後の症例では,尿管口が近くなりやすいため注意が必要である1,2)。本設問はEERPにおいて両側の尿管口を切断してしまった場合についての対応であるが,体腔鏡下に対処するのは難しい状況であることは否めない。尿管口の損傷の程度が激しければ開放手術に移行すべきである。このため,今回は損傷の程度が軽いものに限定して述べたい。
この状況の難しい点は,尿管口が膀胱頸部の開放部のエッジに位置するであろうことと,尿管口を切断しているため尿管下端が狭窄する可能性があることである。また,切り込んだ際に凝固操作を行っているかどうかも重要と思われる。術者や腹腔鏡下手術のチームの技量によるが,この状況では開放手術への移行も念頭に置きながら手術を進める必要がある。当施設では尿管口を切断した症例は経験していないが,吻合部に尿管口が近くなった経験は過去に数回ある。本項のテーマはさらに厳しい状況への対処であるが,文献的考察とともに当施設の経験をもとにして述べたい。
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