書評
「臨床中毒学」―相馬一亥 監修/上條吉人 執筆
廣瀬 保夫
1
1新潟市民病院救命救急・循環器病・脳卒中センター
pp.298
発行日 2010年4月20日
Published Date 2010/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413102029
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この本は単著と聞いていたので,初めて手に取ったとき,その重厚さにまず驚きました。その中身も化学を修めてから医学の道に入られ,さらに精神科医から救急医に転身した上條氏でなければ書けない内容で,まさにユニークかつ実践的な教科書になっています。
本書は,第Ⅰ部が総論として「急性中毒治療の5大原則」,第Ⅱ部が中毒物質各論で構成されています。総論は,まず中毒治療の4原則,すなわち「全身管理」「吸収の阻害」「排泄の促進」「解毒薬・拮抗薬」について解説されています。全編を通じてAmerican Academy of Clinical Toxicology(AACT),European Association of Poisons Centres and Clinical Toxicologists(EAPCCT)のガイドラインなど,EBMを踏まえて記載されていて,引用文献も豊富です。しかも,EBMを重視する論説にありがちな文献的な議論にとどまらず,著者の豊富な臨床経験を踏まえた実践的な記載が多いことが大きな特徴と思います。語呂合わせも効果的に用いられて,わかりやすく整理されています。「合併症の3As」は,私も明日から研修医教育に使おうと思いました。
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