書評
—上條 吉人 著—臨床中毒学 第2版
松本 俊彦
1
1国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部
pp.1295
発行日 2024年7月10日
Published Date 2024/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402229683
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今日,臨床医学においてself-poisoning(毒物もしくは過剰量の医薬品を故意に摂取すること)は重要課題の1つだ.その行為は,自殺目的から行われる場合もあるし,心理的苦痛を紛らわせるため,あるいは,居場所のない者同士が孤立を解消し,仲間との絆を深めるために行われる場合もある.誤って服用するといった事故として発生する場合もあろう.いずれにしても,self-poisoningという現象は,救急医療・自殺予防・依存症医療を横断する問題であり,その治療や再発防止には救急医療と精神科医療との緊密な連携が欠かせない.
本書の著者は,当初,自身の医師としてのキャリアを精神科医から開始し,途中で救急医へと転じ,評者の認識では「臨床中毒学」という医学分野の創始者だ.実際,自殺予防と薬物乱用・依存に関する研究において,著者は文字通り「余人をもって代え難い」存在であり,評者も何度となくさまざまな研究プロジェクトで著者の助力を仰いできた.
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