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編集後記
郡 健二郎
pp.272
発行日 2010年3月20日
Published Date 2010/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101924
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司馬遼太郎さんの「坂の上の雲」が再び人気を博している。NHK大河ドラマで放映されたためもあるだろう。いまさらあらすじを語る必要もないが,長い鎖国時代から目覚めた日本人が,坂を登りつめればやがて手が届くと信じた,憧憬をこめた近代国家を「坂の上にたなびく一朶の雲」に喩えた作品である。
司馬さんが「産経新聞」に連載されたのは昭和43年から47年。昭和43年といえば国内総生産(名目GDP)が世界2位になった年であり,昭和45年の大阪万博に象徴される高度経済成長の最後の時期である。いっぽう若者は,繁栄する社会にあっても,理想を求めて大学紛争などに情熱を燃やした時代でもあった。
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