小さな工夫
ビブラ鉗子による前立腺全摘除術における深陰茎背静脈の結紮
植田 健
1
1千葉県がんセンター泌尿器科
pp.646-647
発行日 2009年7月20日
Published Date 2009/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101791
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前立腺全摘除術(radical prostatectomy:RP)における深陰茎背静脈(deep dorsal vein complex:DVC)の運針による結紮を確実に行うためにビブラ鉗子を考案したので報告する。
Walshら1)によって詳細に前立腺の解剖の検討が行われた結果,RPが広く行われるようになった。しかしこの手術の最も重要な点は,DVCの結紮と思われる。DVCの結紮は難易度が高いうえに,症例により結紮が不十分であると尿道を露出する際にDVC断端から大量の出血を招く。さらに,DVC周囲への不用意な止血操作は,場合により重篤な尿失禁を招くことが考えられる。DVCの結紮に,マクドゥガル鉗子やバンチング鉗子などの手術鉗子が考案されて広く利用されている。マクドゥガル鉗子はDVCと尿道の間を貫通し,DVCを結紮する方法であるが,盲目的操作ゆえ鉗子がDVCを誤って直接貫通し出血を招くこともある。バンチング鉗子は,前立腺のDVCを集束し,鉗子の直下を針糸で運針し,結紮する。しかし,この鉗子によるDVCへの運針は習熟が必要であり,針でDVCを裂くことによる出血を招くこともある。経験によらず安全にDVCに行うには,DVCを集束してDVCと尿道の間に確実に針糸による運針を行うことが必要と思われる。
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