書評
坂井建雄,河田光博(監訳)―プロメテウス解剖学アトラス―頭頸部/神経解剖(第2版)
千田 隆夫
1
1岐大大学院・解剖学
pp.1109
発行日 2014年9月20日
Published Date 2014/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407105198
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
昨今次々と出版されている解剖学アトラスには,百花繚乱の感がある.学生諸君には幸福なことであるが,決して安価とはいえない解剖学アトラスの選択に際して,どれか一冊となると随分迷うのではなかろうか.その中にあって,初版刊行以来,高い支持率を維持しているのが“プロメテウス”シリーズである.本書は,全3巻組の『プロメテウス解剖学アトラス』の第3巻に当たるものであり,初版刊行後わずか5年足らずで改訂第2版が出版された.
初版との相違点を挙げてみよう.第3巻のサブタイトルは初版では「頭部/神経解剖」であったが,第2版では「頭頸部/神経解剖」となった.頭部と頸部が隣接・接続していて,多くの骨,筋,臓器(消化器,呼吸器),血管,神経が頭部と頸部を続けて貫通している事実を考えれば,頭頸部としてまとめることは理にかなっている.これによって第2版には,頭頸部を一緒に描いた新しい図や,臨床的な解説が数多く追加された.次に,第2版の最後に「中枢神経系:要約,回路図,まとめの表」が加わった.この新しいセクションには細密画は全くなく,もっぱら模式図,フローチャート,表によって,複雑な事項を要約・整理し,理解を助けることを目的としている.原著者による第2版の序文には,「試験に出題される重要な項目をまとめの形で記す」「試験のための集中的な復習にも役立つ」とあり,洋の東西を問わず,試験に追いまくられる医療系学生の現実のニーズに答えた新機軸であることがよくわかる.これらの増補改訂によって,総ページ数は初版より120ページほど増えたが,定価が初版と同じに設定されていることは,うれしい驚きである.
Copyright © 2014, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.