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『プロメテウス解剖学アトラス』は,アトラス(図譜)というよりは,図をふんだんに用いた,そして図を主体にした局所解剖学的教科書というべきものである.第1巻(解剖学総論/運動器系)を初めて書店で手に取ってみた時,その図が美しくかつ明解であることに惹かれた.第1巻は理学療法のような運動学を学ぶ分野にとりわけ好評であった.図の豊かさが立体構造をとらえやすくさせ,それが運動機能の理解につながる.このたび出版された第2巻は内臓が主たる部分を占める体幹部の局所解剖学であり,第1巻の特長がどれほど生かせているか,興味を持って読んでみた.
期待に違わず,図は大変わかりやすく構成されている.おそらく初学者でも容易に人体構造を三次元的に理解できることであろう.理解しやすい理由の一つは,何枚もの図が一つの視点から描かれていることである.例えば,胸部を前から見た図は,胸郭前壁を取り除いたところ(心臓はまだ心膜をかぶっている),心膜の前壁を取り去ったところ,心臓と心膜を取り去って肺,食道,大動脈,肺動脈を見せる,ついで肺も取り去って食道,大動脈,迷走神経を見せる,さらに壁側胸膜を取り去って胸郭後壁と大動脈,喉頭と気管を見せる,など合計14枚あるが,これらはすべて同一の角度から眺めたようになっている.コンピューターグラフィックス技術により全く同じ図を使い,さまざまな組み合わせで新しい図を作っているのであろうが,見事に統一されている.図の製作のみに8年を費やしたというのももっともである.その結果,それぞれの図はお互いに,あたかも人体の解剖を再現するようになっている.読者は混乱することなく,図を見比べながら,心臓を取り除いたり戻したりできるのである.
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