特集 ここが聞きたい―泌尿器科処置・手術とトラブル対処法
Ⅱ.泌尿器科手術
D.開腹手術
■前立腺の手術
【前立腺被膜下摘除術】
93.前立腺肥大症に対し前立腺被膜下摘除術を行った患者です。腺腫と外科的被膜との間の癒着が激しく腺腫の摘出に難渋しました。摘出後,前立腺窩をみると外科的被膜は腹側(サントリーニ静脈叢部)に穴が開いており,大量に出血していました。どのように対処すればよいでしょうか。
亭島 淳
1
,
松原 昭郎
1
1広島大学大学院医歯薬学総合研究科腎泌尿器科学
pp.288-290
発行日 2007年4月5日
Published Date 2007/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413101170
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現在では明らかな膀胱刺激症状や下部尿路閉塞症状をきたし,他覚的にも排尿障害を認める前立腺肥大症症例に対して外科的治療を行う場合,その多くにおいて経尿道的前立腺全摘除術(transurethral prostatectomy:以下,TURP)が第一選択となる1)。しかし,経尿道的な切除に長時間を要する可能性が高い大きな腺腫や,膀胱結石などを伴う症例では前立腺被膜下摘除術が選択される。
前立腺被膜下摘除術では,恥骨上式到達法もしくは恥骨後式到達法がよく用いられる2)。恥骨上式到達法は膀胱結石や膀胱憩室などを有する症例や,膀胱内へ突出する著明な中葉肥大を有する症例に適しているが,腺腫核出後の前立腺床を観察しづらい,膀胱壁を切開するため術後の膀胱刺激症状が強いなどの短所がある。恥骨後式到達法では,前立腺床が直視しやすいため止血操作が容易に行える,術後の膀胱刺激症状が比較的軽度であるなどの利点がある一方,膀胱内病変の処理を要する場合にはやや不向きである2)。いずれの術式においても腺腫を外科的被膜から鈍的に剝離し,尖部で尿道から切断して腺腫を摘除する。
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