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1 はじめに
会陰式前立腺全摘除術(以下,会陰式)は1905年にYoung1)により前立腺癌の根治的手術術式として確立され,その後のBeltら2)による術式の改良により普及したが,出血,尿失禁,勃起障害などの合併症が存在した。Walshら3,4)は骨盤内解剖の研究に基づいて恥骨後式前立腺全摘除術(以下,恥骨後式)の術式を改良し,合併症を軽減させるとともに神経血管束の温存で勃起能の維持が可能であることを報告した。恥骨後式の普及で病期診断のための骨盤内リンパ節郭清術が同一術野でできない会陰式は衰退した。しかし,Weldon & Tavel5)の会陰式の術式の改良により神経血管束の温存手術,根治的拡大手術が可能となり,恥骨後式と同等の術式となった。さらに腹腔鏡下骨盤内リンパ節郭清術でリンパ節転移が評価可能となり,転移のない症例の前立腺全摘除術に会陰式が再び注目された。筆者ら6)も腹腔鏡下リンパ節郭清術を先行させ,リンパ節転移の認められない症例に二期的に会陰式を施行していたが,病期B,高・中分化癌,prostate specific antigen(PSA)20ng/ml未満ではリンパ節転移症例はなかった。PSAの臨床応用で早期癌の発見が急増したが,PSA導入以降の前立腺全摘除術の適応症例ではリンパ節転移症例が減少していることが判明した7)。またPSA,臨床病期,前立腺癌の病理学的分化度からリンパ節転移を予測するノモグラム8)が作成され,リンパ節転移の確率の低い症例ではリンパ節郭清をせずに前立腺全摘除術がなされるようになった9)。このような前立腺限局癌に対する前立腺全摘除術に,比較的低侵襲な会陰式が再評価されている。
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