特集 前立腺疾患のすべて
Ⅲ 前立腺癌
治療法の選択と予後
QOLの観点からみた治療選択の分岐点
筧 善行
1
Yoshiyuki Kakehi
1
1香川医科大学泌尿器科
pp.201-206
発行日 2003年4月5日
Published Date 2003/4/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413100855
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1 はじめに
PSAによる前立腺癌スクリーニングの普及は,本疾患の明らかなステージシフトをきたし,早期癌患者数の激増をもたらした1,2)。一方,これら早期前立腺癌患者のための治療選択肢はその幅を広げ,なおかつ各々がほぼ同等の治療効果を得られるようになりつつある。そのため,治療選択にあたっては各々の治療方法について根治率や生存率といった情報以外に,患者のQOLが治療によってどの程度損なわれるかについての情報がよりいっそう求められるようになっている。転移を有する進行期症例に対しても,長期間のアンドロゲン抑制がもたらす負の側面が注目されるようになった。また,再燃癌の発生をどれだけ遅延させるかといった癌の生物学的観点だけでなく性機能の面からも間欠的内分泌療法の是非が論議されているが,ここでもQOLが大きな治療アウトカムの指標となりつつある。本稿では,前立腺癌患者が治療を選択するにあたって,QOLの観点からどのようなエビデンスが明らかになっていて,どのような部分が不透明であるかを中心に概説したい。
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