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放射線膀胱炎,シクロホスファミドやイホスファミドなどによる薬剤性膀胱炎などによる出血性膀胱炎で,高度の出血により膀胱タンポナーデとなるような症例に遭遇することが時々ある。そのような場合,ほとんどの症例で膀胱内のびまん性の静脈性出血が原因であると思われる。今回われわれは,このような静脈性膀胱出血に対しての治療で有効な治療を工夫したので紹介する。
通常われわれは,膀胱タンポナーデをきたすほどの血尿をきたした症例に遭遇した場合,凝血塊を除去したあと,3 way尿道カテーテルを留置して生理食塩水にて還流を行っている(図1)。膀胱からのびまん性静脈性出血と思われたら,原疾患に対する治療とともに,止血目的に集尿袋を膀胱より5~10cm程度高位に置いてみる。これにて血尿がかなり薄くなるようであれば,静脈性の出血であると確信できる。なぜならば,静脈圧は通常数mmHgであり,膀胱内に軽度陽圧をかけるのみで,出血は治まるはずである。図2のように点滴台の途中に集尿袋をくくりつけて膀胱内に軽度の陽圧をかけるようにしている。この方法で,静脈性の出血は,コントロールされ,数日のうちに自然止血される。数例の経験であるが,これまでのところ静脈性出血では難治例の経験はない。この方法の利点として,手軽にどこでもできる。また,非常に経済的である。一方,短所として,膀胱に陽圧をかけることにより,尿のドレナージが不良になり,腎機能障害や尿路感染症合併のリスクが高まる。また,膀胱進展により尿意を感じるなどが考えられる。しかしながら,これまでのところ,上記の短所のいずれもわれわれは経験していない。5~10cmH2Oと極軽度の膀胱内圧であり,生理的な蓄尿時の膀胱内圧の範囲内であるため,基本的に膀胱尿管逆流やコントロール不能な尿意を起こすことはないのではないかと思われる。
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