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第94回日本泌尿器科学会総会が,九州大学・内藤誠二教授を会長として4月12~15日に福岡市で開催された。初日,私は朝6時に笠岡を出て新幹線で博多駅に降り立ち,眠い目をこすりながらメイン会場の福岡国際会議場に急いだ。専門医試験を間近に控えている者としてはまず卒後・生涯教育プログラムを受講することが必須であり,何とか先天性水腎症(腎盂尿管移行部狭窄症:PUJO)を受講することができた。島田氏からPUJOにおける腎障害のメカニズムと通常の腎盂形成術からhigh insertion型までの幅広い術式について,山口氏からはPUJOの発生頻度,US検査の評価法,99mTc-MAG3による腎動態検査のコツなどを詳細にわかりやすく教えていただいた。次に,婦人泌尿器(尿失禁の手術)のレクチャーでは,TVTを安全に行うためのテクニックや最近話題のTOT手術の解説が行われた。武井氏からは高齢者のISDに対するコラーゲン注入療法の実際が示され,高齢者にとって侵襲が少なく有意義な治療法の一つと思われた。
今回,学会印象記を書くという栄誉な仕事を頂いたこともあり「先端研究」とか「最前線」と題したセッションに積極的に参加した。第1日目は「尿路結石の最先端研究を臨床の現場に」を一番前の席に座り,あたかも新聞記者のようにデジカメで撮影しながら拝聴した。結石と肥満の関係,シュウ酸前駆物質であるhydroxyprolineをブタに投与しシュウ酸カルシウム結晶が100%に,12.5%に肉眼的に結石を認めた興味深いデータ,尿中シュウ酸排泄を下げる方法(Ca先行摂取やクレメジンによる吸着),ウラジロガシエキス(ぶな科の常緑木で葉の裏が白いから裏白樫という)による尿細管上皮細胞のシュウ酸障害に対する防御能や活性酸素抑制能などの有用性が示された。私の勤務している病院でも多数の尿路結石患者が来院し,ESWL,PNL,TULを駆使し治療を行っているが,尿路結石の再発予防について十分には対応できていないのが現状である。その反省からも,私にとってきわめて興味深い内容であった。
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