私はこう思う
助産婦はなぜ忙しいか
岩井 光子
1
1岡山大学付属病院
pp.37-38
発行日 1962年3月1日
Published Date 1962/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202292
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はじめに
病産院における助産婦は,母子衛生に関与する尊い専門職業であるという美名のもとに置かれておりながら,個人としても,組織体としても,非常に弱い従属的な地位に拘束され,封建的な勤務体制のなかに働いている.
法的には,独立した技術として認められながら,病院経営の面からは,その技術も,そして待遇や給与に関しても,何ら特別の考慮ははらわれていない.現在の医学にもとづいた積極的な治療介助と,患者のサービスに,日夜を過ごす看護体制において,助産婦の勤務は,現在の定員では,非常に労働過重になつている.人手の少ないのに,看護の要求は大きく,不完全な設備のなかで働くとなれば,無理のきく人間の方にますます重荷がかかつてくることになる.分娩は生理的なもので婦人科疾患とは本質的に異なる.産科は褥婦と新生児もともに取扱うために,新生児の保育という専門的知識を必要とし,継続的観察,看護管理,育児指導,さらにさかのぼつて妊娠中の保健指導すべてが,時間的に割切つて指導することは不可能なことが多い.
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