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京都は世界に名だたる観光地のためか外国人の患者を診る機会が多い.英語に自信のある先生以外はカルテに書かれている患者名がカタカナだと少し気を引き締めるのではないだろうか.つたない英語で診察するだけでもつらいのに,周りに研修医や学生がいたりするとなお一層萎縮してしまう.先輩には日本では日本語で診察すればいいのであり,英語は最小限の単語だけでよいという方もおられる.しかし,実際には私のつたない英語力が外国人の日本語力を上回っていることが多いので,そうもいかない.日本の医学がドイツの影響を強く受けているせいもあり,普段使っているほとんどの病名の発音は英語圏の人には伝わらない.乾癬のことをプソやプソリアーシスと発音しているようではとても無理である.といってきちんと発音したからといってわかってもらえるわけではない.実際に,日本語で乾癬といって何人の人が理解できるであろうか.皮膚科医以外の人は“感染”と勘違いするに違いない.以前,アメリカを旅行している時,飛行機の中で隣り合わせた海兵隊員が私の職業を聞くのでダーマトロジストだと言ったのであるが,私の発音が悪いのかそれとも単語自体を知らないのかどうしても通じなかった.身ぶり手ぶりで説明して,やっと彼も理解し“お前はスキンドクターか”と言ってくれた.なるほどそのような簡単な言い方があるのかと感心した覚えがある.このように難しい英語で患者さんとコミュニケーションしなければならないときは,いつも筆談を交えて説明している.なるべく簡単な英語で病気を説明し,薬の使い方と次回の診察日だけは完全に理解してもらえるように心掛けている.これらの事は日本語で診察する場合もなんら変わらない.したがって,私の診察机にメモ用紙は欠かせない.
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