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乾癬の治療を通していつも思うことがある.というより慢性・難治性のいまだ確実な原因療法の確立されていない疾患についてである.乾癬では角化異常や免疫異常,一部ではその遺伝子異常も解明されてきている.しかしその発症の真の原因・誘因というべきものは種々の説はあるが,いまだ証明されていない.外来診療で患者さんに必ず聞かれる.「原因は?なぜ急にこんな病気になったのか?」と.遺伝的素因や感染,その他の関与などは説明できても,患者さんが納得できるものではない.対症療法で病気をコントロールすると話すと,「でもこの薬で完全に治るわけではないですよね.」と言われるのがいつも辛い.外用はステロイドやビタミンD3製剤,内服はレチノイドや免疫抑制剤,さらに紫外線療法などを選択する.その主な作用機序は角化異常の是正と免疫担当細胞の活性化の抑制である.しかし特に内服には副作用を伴うことがあり,もともと生命予後のよいこのような炎症性疾患に対して使うことは慎重にしなければいけないと常々考えている.外用療法では昔ながらの亜鉛華軟膏貼布の併用や,しばしば治療に苦渋する爪甲の変形にはビタミンD3製剤外用後,紙テープを巻くという一種の密閉療法を試みると有効な場合が多い.まずは副作用の少ない治療から患者さんに合う方法を選び,あきらめることなく工夫・修正する.しかし対症療法だけでなく原因療法をしたい.例えば掌蹠膿疱症のある患者さんでは扁桃摘出術により治癒するように.そこで外来診療で患者さんからいかに多くの情報を得,誘因をみつけるか.さらにヒトの体内で起こっていることを把握するために,患者さんに血液採取や皮膚生検をお願いしている.この臨床的観察の積み重ねと同時に,その誘因と免疫担当細胞との関わりを一つ一つ検証していく.まず患者さんの理解と協力がなくては疾患の解明にはつながらない.それを無駄にしないよう同僚とともに研究をしている.いつか原因治療に結びつく病態を明らかにし,患者さんの協力に報いたい.これが臨床に携わる研究医としての使命と考える.
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